帯状疱疹とは?
帯状疱疹は、多くの人が子供の頃にかかる水ぼうそうと同じ「水痘・帯状疱疹ウイルス」が原因で起こる皮膚の病気です。水ぼうそうが治った後も、ウイルスは体内の神経節に潜伏しています。そして、加齢やストレス、過労などで免疫力が低下したときに、ウイルスが再活性化して発症します。過去に水ぼうそうにかかったことがある人なら、誰でも帯状疱疹になる可能性があります。
主な症状
- ・体の左右どちらか一方に、ピリピリとした刺すような痛みが出現
- ・痛みの場所に、赤い発疹や小さな水ぶくれが帯状に広がる
- ・強い痛みを伴うことが多く、夜も眠れないほどになることも
- ・発熱や頭痛、だるさなどの全身症状が現れることもある
原因と発症の仕組み
- ウイルスの再活性化:水ぼうそう治癒後、神経に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが免疫力低下時に再び活動を開始します。
- 発症リスクが高まる要因:加齢(特に50歳以上)、ストレス、疲労、病気(糖尿病、がんなど)、免疫抑制薬の使用など。
感染の可能性
帯状疱疹は、帯状疱疹として人から人に直接うつることはありません。しかし、水ぶくれの中にはウイルスが含まれており、水ぼうそうにかかったことのない人(特に乳幼児など)には、水ぼうそうとして感染する可能性があります。帯状疱疹の患者さんは、水ぶくれがかさぶたになるまでは、水ぼうそうにかかったことのない人(特に妊婦や免疫力が低下している人)との接触を避けるよう注意が必要です。
帯状疱疹の影響と後遺症
帯状疱疹の皮膚症状は通常2〜4週間程度で治まりますが、一部の人にはつらい後遺症が残ることがあります。特に高齢者では、長期間にわたる痛みが生活の質を大きく低下させる問題となります。
主な後遺症のリスク
- 帯状疱疹後神経痛(PHN):最も一般的な後遺症。皮膚の症状が治った後も、数カ月~数年にわたり焼けるような、またはズキズキする持続的な痛みが残ります。
- 視力・聴力障害:顔面(特に目の周りや耳)に発症した場合、角膜炎、結膜炎、顔面神経麻痺、めまい、耳鳴り、難聴などを引き起こすことがあります。重症化すると失明に至ることも。
- 運動障害:稀に、影響を受けた神経の支配領域で筋力低下や麻痺が起こることがあります。
- その他:皮膚の瘢痕(傷あと)や色素沈着が残ることもあります。
日常生活への影響
- ・痛みによる睡眠不足、集中力の低下
- ・仕事や家事、趣味など日常活動の制限
- ・慢性的な痛みによる抑うつ気分、不安感の増大
- ・全般的な生活の質の低下
ワクチン接種で帯状疱疹を予防
帯状疱疹はワクチンで予防できる病気です。特に50歳以上の方は発症リスクが高まり、帯状疱疹後神経痛(PHN)にも移行しやすいため、ワクチン接種による予防が推奨されています。現在、接種できる帯状疱疹ワクチンは2種類あります。
帯状疱疹ワクチンの比較
名称 | 弱毒生水痘ワクチン「ビケン」 | 「シングリックス」 |
メーカー | 阪大微生物病研究会 | グラクソ・スミスクライン |
ワクチンの種類 | 生ワクチン | 不活化ワクチン |
接種回数 | 1回 | 2回(通常2ヶ月間隔) |
効果持続期間 | 接種後5年程度で徐々に低下(8年目で31.8%まで低下との報告あり) | 少なくとも10年間は高い予防効果を維持(10年後でも80%以上維持との報告あり) |
発症予防効果 | 約51.3% | 50歳以上で約97%、70歳以上で約91% |
神経痛予防効果(PHN) | 約66.5% | 50歳以上で約100%、70歳以上で約88.8% |
接種できない方 | 明らかに免疫機能に異常のある疾患を有する方、免疫抑制をきたす治療を受けている方、妊娠している方 | 本剤の成分に対し重度の過敏症(アナフィラキシーなど)の既往のある方、急性疾患にかかっている方 |
主な副反応 | 注射部位の赤み・腫れ・痛み(比較的軽度)、稀に発熱や発疹 | 注射部位の痛み・赤み・腫れ(比較的多いが高い効果の現れとも言える)、筋肉痛、疲労感、頭痛、発熱(多くは数日以内に改善) |
費用(任意接種・目安) | 約7,700円 | 1回あたり約22,000円(計2回で約44,000円) |
ワクチンの発症予防効果比較
シングリックスは70歳以上のデータ、ビケンは60歳以上のデータに基づきます。
ワクチンの神経痛予防効果比較
シングリックスは70歳以上のデータ、ビケンは60歳以上のデータに基づきます。
ワクチンの効果持続期間の比較イメージ
データは報告により異なる場合があります。あくまで目安です。
選び方のポイント
- 長期的な高い予防効果を重視したい方、免疫力が低下している・低下する可能性のある方:シングリックスが推奨されます。費用は高めですが、予防効果・持続期間ともに優れています。
- 費用を抑えたい方、1回の接種で済ませたい方:ビケンも選択肢の一つです。ただし、効果の持続期間や免疫抑制状態の方への接種制限に注意が必要です。
どちらのワクチンを接種するかは、ご自身の健康状態、費用、副反応などを考慮し、医師とよく相談して決定することが大切です。
公費助成について
重要:2025年(令和7年)度から、65歳の方などへの帯状疱疹ワクチンの予防接種が、予防接種法に基づく定期接種の対象になりました。
2025年度 定期接種の対象者(予定)
- 2025年度内に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳となる方
- 2025年度内に100歳以上となる方
※必ずお住まいの市区町村のウェブサイトや広報で最新情報をご確認ください。
予防接種料金の例(自己負担額)
患者さん種別 | 弱毒生水痘ワクチン「ビケン」 | 「シングリックス」 |
50歳以上の一般の方(任意接種) | ¥7,700 | ¥20,000×2回 |
八尾市(定期予防接種の対象者) | ¥4,400 | ¥11,000×2回 |
大阪市(定期予防接種の対象者) | ¥4,500 | ¥11,000×2回 |
東大阪市(定期予防接種の対象者) ※接種は事前申請が必要 | ¥4,000 | ¥10,000×2回 |
自治体による助成の詳細
- 八尾市:予防接種対象年齢の八尾市民で生活保護受給者や非課税世帯の方は、事前に八尾市保健センターに申請することで無料で接種できます。
- 大阪市:予防接種対象年齢の大阪市民で生活保護受給者や非課税世帯の方は、生活保護受給者証または非課税世帯の証明を持参することで無料で接種できます。
- 東大阪市:予防接種対象年齢の東大阪市民の方が当院で接種する場合、東大阪市が発行する「定期予防接種依頼書」と「専用の予診票」が必要です。接種後には発行できませんので、公費料金の適用を受けるには必ず接種前に交付申請・発行を受けてください。生活保護受給者の方は福祉事務所が発行した「被保護証明書」を合わせて提出した場合のみ無料で接種できます。
助成を利用してお得にワクチン接種! 詳しくは、お住まいの自治体の保健所やウェブサイトで最新情報を確認しましょう。
接種を受けるには
帯状疱疹ワクチンの接種は、予約制となっています。以下の点に注意して、接種を検討しましょう。
- 予約:お電話で接種日時を決めていただき、予約日に受診・接種していただきます。
- 体調管理:接種当日は体調を整えて受診しましょう。37.5℃以上の発熱がある方や、急性疾患にかかっている方は接種できません。
- 相談:持病がある方や、過去に予防接種でアレルギー反応が出たことがある方、その他健康状態で気になることがある方は、事前に医師によく相談してください。
- 持ち物:健康保険証、お持ちであれば診察券、公費助成を利用する場合は自治体から発行された書類(接種券、予診票、依頼書など)が必要になることがあります。事前に医療機関や自治体に確認しましょう。
帯状疱疹の後遺症から身を守るために、ワクチン接種を検討しましょう。